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2024/01/26 09:00



「食の和・人の和」プロジェクトの推進母体、平林金属株式会社と、アムダマインズ(特定非営利活動法人AMDA社会開発機構)のコラボで進めている「大震災で被災したネパールの農業支援事業」で栽培・収穫したコーヒー豆。グループ会社「葉豆瑠農園株式会社」と連携し、無事に岡山に届きました。
その麻袋には、「エクスポーター:グローバルエコベンチャー(輸出会社)・インポーター:平林金属」といううメッセージが、ひとつひとつ手書きで書かれています。
ネパールの農園と、平林金属が対等な関係であることをよく象徴しています。


「SDGs目標①貧困層をなくそう」運動として支援がはじまっていますが、ネパールの人たちは、本人たちでやろうと考えていて、日本の
企業におんぶにだっこでやるのではなく、自分の責任でやろうとしています。私たちも、「支える」という意味の「支援」という言葉もあまり使いたくないと考えています。
事業実践の中で、携わってくださるすべての方の思いであったり、ネパールの人たちと生活を共にし、寄り添いながら関わっているその姿勢が、「支援」を超えた強い絆を生み出したのだと思います。


ラマ・オーガニック農園

今回取り扱いさせていただくコーヒーを栽培している、ラマ・オーガニック農園を紹介します。
農園主はビルドス・ラマさんです。
「この人がつくるコーヒーなら、美味しくないわけがない」
これが、ビルドスさんに会って、彼が働くコーヒー農園を見た最初の印象です。

農園には、約300本のコーヒーの木の他、アボカドやレモン、パイナップルなど色々な果物の木(去年からドラゴンフルーツにも挑戦しているのだとか)、そして10,000株の小さなコーヒーの苗。農園の代表、と言っても、彼と奥さんのふたりだけでやっているものだから、ビルドスさん自ら、汗を流してせっせと忙しく働いています。

なんとも美しい油絵のようなビルドスさんのご自宅。そのすぐ目の前に摘んだばかりのコーヒーチェリーをパーチメントに精製加工するためのウェットミルプロセスの加工場があり、その下側にコーヒー農園があります。家庭用の台所シンクをつなぎ合わせたり、プラスチックのバケツに自分で穴をあけて「ザル状」に加工したり、パルピングマシンが2段階構造に改良されていたり、ビルドスさんが自身の経験を踏まえて、かつ身の回りで調達できるものを使ってたくさん工夫を凝らしていることが伺えます。まさに、彼が自ら作ったカスタムメイドなウェットミルです。家の窓を開けるとコーヒーの実がなっています。その日は、精製加工を見せたい、ということで、朝、ビルドスさん自ら農園に行って、チェリーを山ほど摘んできてくれていました。摘んだコーヒーチェリーの実をパルパーという機械でパルピング(※注)し、次にバケツの中で水を入れずに発酵させます。その度合いで味が変わります。温度と時間で風味が変わるのです。ビルドスさんは日々、発酵実験を繰り返しています。そしてそれを乾かしてパーチメントという状態にし、袋詰めをします。

ここまでが「ウェットミル」というコーヒー豆の栽培の半分の工程です。ここまで一つの農園で完結されるべきなのですが、ビルドスさんはこれができていて、完成されている状態です。
ビルドスさんがそうやって大事に育てたものは、その思いがなにかそこに宿ると思います。それを感じる人が口に入れると、大事にされているその思いも伝わるのではないかと考えています。虐げられ、強制労働で作らされたコーヒーと、大切に作られたコーヒーはきっと違うと思います。
話をしていて、どんな質問にも丁寧に、目を見て受け答えをしてくれる姿がとても印象的でした。今挑戦しているのは、嫌気発酵(パーチメント精製加工の手段のひとつ)なのだそう。海外と取引をしている知り合いのコーヒートレーダーに国際市場での動向を教えてもらいつつ、自分でやり方を調べてやってみているところなのだそうです。「まだうまくいくのかどうかもわからないんだがね」なんて笑いながら、試行錯誤している姿も隠さずに見せてくれるところに、彼の実直さを感じました。

農園を見下ろす形で建っている自宅で、ビルドスさんが自ら焙煎するところを見せてくれました。もちろん、焙煎機なんてものはなくて、生豆が入った厚手で深みがあるアルミの鍋を直火にかけて、たくさんの竹の棒を束ねたものでかき混ぜ、「これがいちはぜ、これがにはぜ…」と説明しながら20分ほど休まず手を動かしてくれたのです。

とにかく、コーヒーに対する熱量がすごい。種から、カップに注がれるコーヒーになるところまで、全てのプロセスに彼のエネルギーが注がれています。
「この農園の豆は、出荷して私の手を離れてしまえば、他の農園の豆と混ぜられて、どこで誰がどのように飲んでいるのか分からない。私の夢は、精魂注いだ豆たちがこの農園の名前で市場に出され、そのおいしさが最大限引き出された形で飲んでもらえることなんだ。」
そう話してくださったビルドスさん。

その作り手の思いを皆様のもとへ、また未来へと繋いでいくことが私たちの使命であると考えます。
だから、この豆を皆さんに自身をもって届けたいと思います。「ラマ・オーガニック農園」の名前で、飲ませていただいたコーヒーの味の感動と共に。
※パルピングとは
パルピングとは、コーヒーチェリー(実)の赤い果実を除去し、中に入っているコーヒーの「種子」を取り出す精製作業のことを言います(ちなみにこの種子をさらに加工してやっと「コーヒー豆」になります)。
近年までこの作業ができる機械がなく、木から収穫したコーヒーチェリーを乾燥させただけのものを売っていました。この乾燥させただけのものと、パルピングをした「パーチメント」の状態のものでは、キロあたりの取引価格に4倍もの差があるのです。
機械がなく、その技術も知らなかった農家は、乾燥チェリーを安く買いたたかれていたのです。
この作業が都市部の加工業者に頼らず、村の中でできるようになると、それだけでコーヒー農園が倍以上に増えることが見込まれます。
コーヒーは、産業が乏しいネパールにとって経済発展のための希望の光になる可能性を持っています。しかしそれだけではなく、ネパールの人々が自国のコーヒーの味に誇りを持ち、コーヒーを片手に世話話に興じることが日常になるくらい、ネパール独自のコーヒー文化が育まれていくことを願っています。




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