2023/02/10 10:16
1月下旬、最強寒波による大雪の名残の中、私たちは和歌山で有田みかんを生産する中嶋さんを訪ねてきました。
町を抜け、山道を行くと中嶋さんがいらっしゃる有田郡有田川町へ。
有田川町は、和歌山県内のほぼ中央部に位置していて、東西に流れる「有田川」を中心に豊かな自然景観が広がっています。
有田地域は山が多く、みかん園の70%以上が傾斜地で、急傾斜園も多い産地だそうです。
平地から山の傾斜にかけて360度、みかん畑のパノラマに囲まれています。
今回、中嶋さんを訪ねるにあたって、数あるみかん農園の中で、なぜ中嶋さんなのか?
ご紹介くださった方に伺ったところ、「とにかく他とは違うから」とのこと。
その「違い」について、中嶋さんに色々お話を伺いました。
まるで高級なジュース
インタビュアー(以下“イ”):
「中嶋さんが作るみかんの、他のみかんとの違いを教えてください」
中嶋さん(以下“N”)
「とにかく糖度が高い。一般的なみかんの糖度が11度~12度、甘いといわれるもので13度が限度のところ、うちのみかんは15度~20度と、奇跡的な甘さを実現させました」
「まずは食べてみてください」
試食させていただくと、驚きです。皮がうすく、色、粒ともに濃厚で凝縮されていて、口に入れた瞬間みずみずしさが広がり、まるで濃縮還元されたジュースのようでした。
サイズは3S~3Lと種類も豊富ですが、どれも本当に感動的な美味しさです。
この糖度と濃縮度が、なにより他の農家さんとの決定的な違いなのです。
たとえばジュースに加工したときに、他の農家のみかんでは「いいみかん」と評判のものでさえ分離するのに対し、中嶋さんのみかんで作るジュースは全く分離しないほど濃度が高いと評価をいただいているのだそうです。
この違いの秘密は、土と農法にありました。
イ:「規格外のものはどうされているのですか?」
N:「うちでは規格外という概念がもともとないんです。ほとんど出荷しています。傷など見た目に問題があるものでも、味は最高なものばかり。ジュースなどの二次加工品として出荷しています」
ヒントは父の遺言
イ:「現在の農法はどのようにして生まれたのですか?」
N:「22歳から家業のみかん農家に携わってきました。父から事業を受け継ぎ、12年前に農協から独立したことをきっかけに、他の農家さんと一味違う、特化した美味しさを目指すようになりました。最小限に農薬を減らし、その分土づくりや環境づくり、農法の研究を徹底して、みかんにとって最善の栽培方法を実施しています」
イ:「すぐにこんなに甘いみかんができたんですか?」
N:「受け継いでしばらくは糖度を高めることに苦労していましたが、ある時父の遺言をふと思い出したんですよ。その時耳にした栽培についてのアドバイスの記憶をたどり、試行錯誤を繰り返すうちにあることを試してみたら、とたんに格段と味が良くなったんです。
遺言から得た微かなヒントがすべてのはじまりでした。天国にいる親父が降りてきてくれたんかなぁ…」
土づくりが命
イ:「その遺言から得た“あること”とは?」
N:「企業秘密です(笑)」
イ:「土づくりの具体的なこだわりを教えてください」
N:「みかんに適した、水はけがいい土に独自に配合した有機肥料をすき込んだ土壌に入れ替えています。土自体が石土で透水性が高い上に、何百本もの透水管を畑の下に敷き、水はけをよくしています。さらには、地面にマルチシートを敷き、雨水の侵入を防ぎつつ、土壌中の不必要な水分を放出させるなどの工夫をしています」
イ:「入れ替えは何人くらいで行ったのですか?」
N:「基本的には全て一人です」
イ:「すごい重労働ですね…!」
N:「でもうちのみかんには不可欠な作業なんです。土が命ですね。今も日々研究を重ね、少しでも高品質なみかんが作れるよう努力を重ねています。

「中嶋さんの有田みかん」というブランド
イ:「みかんづくりの一年の流れを教えてください」
N:「1月中旬にはすべての出荷が終わり、次のシーズンへ向けての準備が2月より始まります。春になると芽が出て、5月に花が咲く。栽培農家はその前に春肥という肥料を与え、剪定を行い、花を摘み、芽と花のバランスを調整します。
花が咲き、その後に小さな果実が着き、夏の間肥大を続けます。間引き作業を経て、秋になるとおいしくて、きれいで、大きさ・形の良いみかんが揃い、収穫が始まります。10月~12月、収穫しながら出荷、という流れですね」
開封した時の感動を届けたい
イ:「ご進物でもたくさんのご要望があるそうですが、こだわりはありますか?」
N:「ひとつひとつ丁寧に手作業で検品、収穫、出荷しています。また、出荷する際の梱包にも試行錯誤を経て、傷の原因であるホチキス留めからテープ・バンド留めに変更し、出荷先のお店がすぐ開梱、箱ごと展示販売できるよう工夫しています」
また、「中嶋さんの有田みかん」というブランドが確立されつつあり、そのための工夫も。
N:「ご進物にふさわしい美味しい箱詰めにも配慮が行き届くよう、副資材にも手を抜かないようにしています。普通のみかん箱を想像してもらうと、箱にゴロゴロっとみかんが入っているかと思いますが、うちではひとつひとつきちっと並べて箱に詰めています。イメージは、箱の中で飾るように整列されている高級イチゴです」
より多くの人へ届けたい
イ:「今後さらに増える注文の対応は大丈夫ですか?」
N:「今、この時期だと、遅くても5時(早い時で3時半や4時)から出荷準備などを始めないと間に合わない状況です。
口コミや人づてで年々増えている注文はほぼすべての業務を一人で行っていたため、メールの対応が夜中になってしまうこともありましたが、昨年秋からアルバイトの子に手伝ってもらうようになり、だいぶ助けてもらえているので、規模拡大へ向けて始動し、少しずつ園場の拡張を進めています。一朝一夕にはいきませんが、より多くの方にこのみかんを召し上がっていただくために、がんばっています」
イ:「お客様の反応はどんな感じですか?」
N:「全国各地からシーズン中何度も取り寄せてくださるお客様も多くいらっしゃいます。最近印象的だったのが、『ブランデーによく合う』との感想。ビックリしましたが、確かにみかんが濃厚なので、オレンジボンボン(※)のような味わいが楽しめるのかもしれませんね」
※外側をチョコレートで固め、中に果汁・ウィスキー・ブランデーなどを包み込んだお菓子
何百万個とみかんを触ってきた中嶋さんの手は、分厚くてまあるく太陽のようにあったかそうでした。「これだけみかんを触っていると、パッと触れただけで美味しいみかんかどうかの見分けがつくんです」
そんなあったかな中嶋さんの作り出す、奇跡のみかん。
皆様のもとへお届けできる日を楽しみに!